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アウト・フレイジング その1

コード・スケールから外れた音を効果的に使う方法について解説していきます。

アウト・フレイジングとは

簡単に言うと「コード構成音以外の音をフレイズに取り入れる」です。

もうひとつ「調性をシフトさせる」のも1つの考え方となります。

他にも好きなアプローチとしては「全く別のコードチェンジをスーパーインポーズ」させたりします。

アウトフレイズ物語

Pentatonic & Dorian(第1話)

AさんBさんが2人でギターを弾いています。

Aさんはコード「Cm7」を繰り返し弾いています。

Bさんはメロディを弾いています。

最初にBさんはコードに合うメロディ「Cm7」の構成音である「C・E♭・G・B♭」だけを弾けば100%マッチすると考え、この4つの音だけでメロディを弾きました。

しかし、どうも単調すぎるのでBさんは「Cm7」に対して「4th」の「F音」をメロディに追加しました。

「C・E♭・F・G・B♭」=「Cマイナー・ペンタ(E♭メジャー・ペンタ)」

「F音」を追加した事でよりメロディアスになったが、さらに上を目指して「9th・6th」の「D音・A音」も追加しました。

「C・D・E♭・F・G・A・B♭」

これは「C Dorian Scale」となります。
「C Dorian Scale」=「Key of B♭」ですね。

※「B♭Major Scale」の第2音から弾くと「C Dorian Scale」となる。

ここまでは「インサイド」のお話でした。

Bさんは少しづつ「Cm7」に対して「テンション」を追加した事でメロディを膨らませた事がわかったと思います。

「テンション」だから「4th」ではなく「11th」と表記すべきでは?と思っている方もいるかもしれませんが、どちらでも良いです。あなたのおぼえ安い方で結構です。

Shifting the tonality(第2話)

Bさんはしばらく「C Dorian Scale」でメロディを弾いていましたが、「マイナー・コードに対して使えるスケールは他にもある!」

と考え「Cm」を決定させている音である第3音の「E♭」を含んだスケール「C Phrygian Scale」「C Aeolian Scale」「C Locrian Scale」もマッチするに違いない!

Bさんはすぐ実行に移しました。1小節おきに「C Dorian Scale」「C Phrygian Scale」「C Aeolian Scale」「C Locrian Scale」と弾きました。

その考えは見事に的中してコード「Cm7」にマッチしました!しかし、コードを弾いていたAさんは不思議な感覚になっていました。

それは・・・

1小節ごとにBさんが調性をシフトさせていたからなのです。

「C Dorian Scale」 =「Key of B♭」
「C Phrygian Scale」=「Key of A♭」
「C Aeolian Scale」 =「Key of E♭」
「C Locrian Scale」 =「Key of D♭」

※「A♭Major Scale」の第3音から弾くと
「C Phrygian Scale」

※「E♭Major Scale」の第6音から弾くと
「C Aeolian Scale」

※「D♭Major Scale」の第7音から弾くと
「C Locrian Scale」となる。

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解説 1

はじめにBさんは「Key of B♭」の中で弾いていたが途中で「C Phrygian Scale」を弾いた事によって「Key=A♭」にシフト。

次に「C Aeolian Scale」で「Key=E♭」にシフトし、最後に「C Locrian Scale」を弾くことによって「Key=D♭」にシフトしたのです。

「C Dorian」から「C Phrygian」にシフトする事によって「メロディが部分的に移調」する事がわかったと思います。

次にこの4つのスケールの違いを検証してみましょう。

C Dorian
「C・D・E♭・F・G・A・B♭」

C Phrygian
「C・D♭・E♭・F・G・A♭・B♭」

C Aeolian Scale
「C・D・E♭・F・G・A♭・B♭」

C Locrian Scale
「C・D♭・E♭・F・G♭A♭・B♭」

C Phrygian「第2音、第6音」に注目してください。「D♭・A♭」は「Cm7」に対して「♭2、♭6」となります。

C Aeolian「第6音」も「♭6」です。

C Locrian「第2音、第5音、第6音」が「♭」してます。

このように比較すると、4つの中では「C Dorian」と「C Locrian」がより異なる音が多いので「C Locrian」が最もアウトサイドと言えます。

逆に「C Aeolian」が最もインサイドに近いと言えます。

ここまではコード「Cm7」が「Key of B♭」である事を前提に解説してきましたが、元になる「インサイド」を理解することが「アウトサイド」を理解することになります。

Arpeggio(最終話)

Bさんはもう1度「インサイド」でのアプローチを考えました。それが「アルペジオ」でした。

「B♭Major Scale」ⅣM7の「E♭M7」やⅦm7(♭5)の「Am7(♭5)」アルペジオを試してみたところ、これも見事にマッチしました。

TAB譜【E♭M7 Arpeggio】

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「E♭・G・B♭・D」

これは「Cm7」に対して「♭3rd, 5th,♭7th, 9th」で、Cm9サウンドとなる。

TAB譜【Am7(♭5) Arpeggio】

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「A・C・E♭・G」

「6th, Root,♭3rd, 5th」で、Cm6サウンドとなる。

この後もBさんは色々なアルペジオやスケールを使って「インサイド&アウトサイド」を試みて楽しんだそうです。

おしまい。

解説 2

もう1度「Cm7」のコード構成音を並べてみます。

「C・E♭・G・B♭」/「 R,♭3, 5,♭7」

次に「テンション」を追加していきます。

「D・F・A」/「9th, 4th, 6th」

これで「C Dorian」が完成しました。

「C・D・E♭・F・G・A・B♭」

これが「インサイド」の全てですが、ここである疑問が浮かびます。

誰がこの「Cm7」は「Ⅱm7」(C Dorian)と決めたのでしょうか?

「C Dorian」=「Key of B♭」ですが、ただ漠然とそこにあるコード「Cm7」はまだ「key」など無いのです。

もし、曲を演奏する前にお互いで打ち合わせしたり、楽譜にメロディがあってそのメロディが「C Dorian」の音で書かれた曲であれば「Key of B♭」となりますが、何も指定が無い状態のコード「Cm7」の場面で「key」を決めるのはメロディを弾く人となります。

メロディを弾く人が「C Phrygian」を弾けば「Key」は「A♭」となり、「C・D♭・E♭・F・G・A♭・B♭」が「インサイド」となるわけです。

当然、このスケールに無い音が全部「アウトサイド」の音となります。

まずは「インサイド」について理解できたでしょうか?

次章ではコード「Cm7」に対して「アウトサイド」を検証しながら実践ですぐ使えるシンプルで大胆なアプローチを解説します。

ABOUT US
TKex-musician
ミュージシャンを目指してニューヨークに5年ほど留学し、現地でたくさんの事を学びました。このブログは私が学んできたジャズ理論の集大成です。ちなみに2014年に音楽活動から退き、現在はのんびり楽しく暮らしています。